製剤の調査資料

[出典]
山口恵三、石井良和、岩田守弘、他:Meropenemを含む各種注射用抗菌薬に対する2004年臨床分離株の感受性サーベイランス。

最終データ更新日:2010-07-31

Miconazole [MCZ]

ミコナゾール, 抗真菌剤

1. 商品名

先発品

  • フロリードF注200ml 【持田製薬】

2. 日本における発売年

1986(昭和61)年

3. 特長

[注射]

  • 広範囲に強力な抗真菌作用を発揮する。
  • 静菌的作用に加え、高濃度では殺菌的作用を有し、耐性獲得が少ない薬剤である。
  • 真菌消失率が高く、優れた臨床効果を発揮する。

[内服]

  • 本邦初のゲル状口腔・食道カンジダ症用剤である。
  • 有効濃度が口腔内に長時間保持される。
  • 高い真菌消失率が確認されている。
  • 白苔・発赤等の症状に高い改善率が認められている。

4. 承認済有効菌種

[内]

  • カンジダ属による次の感染症:口腔カンジダ症、食道カンジダ症

[注]

  • クリプトコックス、カンジダ、アスペルギルス、コクシジオイデスのうち本剤感性菌による次の感染症:真菌血症、肺真菌症、消化管真菌症、尿路真菌症、真菌髄膜炎

[腟用]

  • カンジダに起因する腟炎、外陰腟炎

[外皮用]

  • 次の皮膚真菌症:白癬、カンジダ症、癜風

5. 承認はとれていないが、臨床的に有効と思われる菌種

  • トルロプシス属
  • スポロトリックス属
  • トリコスポロン属
  • ヒストプラズマ属
  • ホンセカエア属
  • ブラストマイセス属
  • ヒアロホーラ属
  • ゲオトリクム属
  • クラドスポリウム属

6. 用法・用量

[内]

  • 1日200~400 mg(ミコナゾールゲル10~20g)を毎食後及び就寝前の4回に分け投与
  • (用法・用量に関連する使用上の注意)
    本剤の投与期間は原則として14日間とする。なお、本剤を7日間投与しても症状の改善がみられない場合には本剤の投与を中止し、他の適切な療法に切り替えること。

(1)口腔カンジダ症

  • 口腔内にまんべんなく塗布
  • 病巣が広範囲に存在する場合は、口腔内にできるだけ長く含んだ後、嚥下

(2)食道カンジダ症

  • 口腔内に含んだ後、少量ずつ嚥下

[注]

(1)点滴静注

  • 200 mg当たり200 ml以上の生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈し、初回200 mgから開始し、以後1回200~400 mg、1日1~3回、30~60分以上かける(増減)
  • 輸液量が制限される場合には200 mg当たり50 ml以上で希釈、30~60分以上かける
  • 髄膜炎の場合は髄腔内注入を併用する
  • (用法・用量に関連する使用上の注意)
    本剤を希釈せずに急速に注射した場合、一過性の頻脈又は不整脈があらわれるおそれがあるので、本剤の使用にあたっては用法・用量を厳守すること。

(2)髄腔内注入

  • 1日1回5~20 mg、1~7日ごと(増減)
  • (用法・用量に関連する使用上の注意)
    髄膜内注入は確定診断がなされた真菌髄膜炎のみに行うこと。投与に際しては観察を十分に行い、投与部位、投与速度、投与間隔等に十分に注意すること。

[外皮]

  • 1日2~3回、塗布

[腟用]

  • 1日1回1個、腟深部に挿入
  • 一般に6日間投与で真菌学的効果(一次効果)及び自・他覚症状の改善が得られるが、菌の再出現防止のためには、14日間投与することが望ましい

7. 作用機序

  • 低濃度では主として真菌の細胞膜及び細胞壁に作用して膜透過性の変化を起こし、高濃度では細胞の壊死性変化をもたらして殺菌的に作用する

8. 血中半減期は長い(注射)

1時間点滴 β1/2 点滴終了時血中濃度は0.96~3.5μg/mLの値となり、以後漸減して7~8時間後では点滴終了時の値の1/4以下であった。
  • (腟用)健康な婦人に本剤を経腟投与しても、腟などの吸収はほとんど認められていない。
  • (外皮用)健常人の正常皮膚に本剤を14日間連日塗布した結果並びに足部白癬患者の障害皮膚に7日間連日塗布した結果、皮膚からの吸収はほとんど認められていない。
  • (内服)口腔内残存濃度:健常成人男子20例に本剤5g(ミコナゾールとして100mg)を舌上に塗布し、2時間後、4時間後及び6時間後の舌上付着液中のミコナゾールを測定したところ、それぞれ平均1,342.2μg/mL、326.2μg/mL及び149.0μg/mLであった。
  • (内服)血漿中濃度:雄ラットにC-ミコナゾールを10mg/kg経口投与したところ、投与2時間後以降の血漿中放射能濃度の推移は、同用量を雄ラットに静注したときのそれとほぼ一致していたが、血漿内未変化体濃度は経口投与1時間後において静注時の1/16以下であったことから、ミコナゾールは肝における初回通過効果による代謝を受けやすいことが示唆された。

9. 排泄経路

  • 腎………約15%
  • 肝臓………約70%
  • その他………約15%

10. 臓器移行性

  • ◎:極めて良好
  • ○:良好
  • △:あまり良くない
  • x:ほとんど移行なし
  • ?:不明
  • *:実験動物データ
  • 左記は、注射の場合のデータ
腎・尿路 ○*
肝・胆汁 ○*
○*
骨髄 △*
骨盤腔
臍帯血
腹腔
母乳 △*
扁桃腺
羊水
髄液 ×*
腸管
副鼻腔
筋・皮下組織
胸腔
歯槽
副腎 ◎*
下垂体 ○*
心臓 ○*
甲状腺 ○*
脾臓 ○*
△*
△*

11. 副作用

  • ◎:5%以上
  • ○:0.1%以上5%未満
  • △:0.1%未満
  • ×:これまでに報告はない
  • ?:頻度不明
  • !:同系薬剤で報告がある
  • !!:大量投与時に起こる
  • 左記は注射の場合

[外皮用]

皮膚

[内服]

過敏症
消化器
肝臓

[腟用]

過敏症
ショック
QT延長、心室性不整脈(心室性期外収縮、torsades de pointesを含む心室頻脈等)
過敏症
腎障害
急性腎不全
肝障害
黄疸
消化器障害
血液・造血器障害
溶血性貧血 ×
精神・神経系障害
循環器
聴覚障害 ×
Vit.B・K 欠乏症 ×
偽膜性大腸炎 ×
電解質異常 ×
Antabuse作用

12. 使用上の注意

禁忌

  • (注射)(内服)(外皮用)(腟用)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • (注射)(内服)ピモジド、キニジン、トリアゾラム、シンバスタチン、アゼルニジピン、酒石酸エルゴタミン、メシル酸ジヒドロエルゴタミンを投与中の患者
  • (注射)(内服)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人

原則禁忌

慎重投与

  • (注射)(内服)ワルファリンを投与中の患者
  • (注射)(内服)経口血糖降下剤(グリベンクラミド、グリクラジド、アセトヘキサミド等)を投与中の患者
  • (注射)本人又は両親,兄弟に気管支喘息,発疹,じんま疹等のアレルギーを起こしやすい体質を持つ患者
  • (注射)薬物過敏症の既往歴のある患者
  • (注射)肝障害、腎障害のある患者[症状を悪化させるおそれがある]

重要な基本的注意

  • (注射)(内服)本剤とワルファリンの併用において、ワルファリンの作用が増強され、出血をきたした症例が報告されている。ワルファリンと併用する場合は、プロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与すること。
  • (注射)(内服)本剤と経口血糖降下剤(グリベンクラミド、グリクラジド、アセトヘキサミド等)との併用において、経口血糖降下剤の作用が増強され、低血糖症状をきたした症例が報告されている。これらと併用する場合は、血糖値その他患者の状態を十分観察しながら慎重に投与すること。
  • (注射)本剤の添加物であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する医薬品でショックの発現が報告されているので、投与に際してはアレルギー既往歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと。また、経過観察を十分に行い、異常があらわれた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置をとること。
  • (内服)誤嚥により、呼吸困難、嚥下性肺炎等を引き起こすおそれがあるので、誤嚥を起こす恐れのある患者(高齢者、乳児、嚥下障害、喘息患者等)に投与する際には注意すること。

相互作用 併用禁忌

  • (注射)(内服)ピモジド[QT延長,心室性不整脈(torsades de pointesを含む)等の重篤な心臓血管系の副作用が現れる恐れがある]
  • (注射)(内服)キニジン[QT延長等があらわれるおそれがある]
  • (注射)(内服)トリアゾラム[トリアゾラムの作用の増強および作用時間の延長があらわれるおそれがある]
  • (注射)(内服)シンバスタチン[シンバスタチンによる横紋筋融解症があらわれるおそれがある]
  • (注射)(内服)アゼルニジピン[アゼルニジピンの血中濃度が上昇するおそれがある]
  • (注射)(内服)酒石酸エルゴタミン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン[これらの薬剤の血中濃度が上昇し、血管攣縮等の重篤な副作用があらわれるおそれがある]

相互作用 併用注意

  • (腟用)ワルファリン[ワルファリンの作用を増強することがある(腟からの吸収はほとんど認められていないが、外国において、ワルファリンとの併用により出血をきたした症例が報告されている。)]
  • (注射)(内服)経口血糖降下剤(グリベンクラミド、グリクラジド、アセトヘキサミド等)、フェニトイン、カルバマゼピン、ワルファリン[これらの薬剤の作用を増強することがある]
  • (注射)(内服)ドセタキセル、パクリタキセル、塩酸イリノテカン[これらの薬剤による骨髄抑制等の副作用が増強するおそれがある]
  • (注射)(内服)シクロスポリン[シクロスポリンの血中濃度が上昇することがある]
  • (注射)(内服)タクロリムス水和物、アトルバスタチン、ピンカアルカロイド系抗悪性腫瘍剤(ビンクリスチン等)、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗剤(ニフェジピン等)、ベラパミル、シルデナフィル、アルプラゾラム、ミダゾラム、ブロチゾラム、メチルプレドニゾロン、セレギリン、エバスチン、メシル酸イマチニブ、ジソピラミド、シロスタゾール[これらの薬剤の血中濃度が上昇する恐れがある]
  • (注射)(内服)HIVプロテアーゼ阻害剤(硫酸インジナビル、メシル酸サキナビル、リトナビル等)[ミコナゾール又はこれらの薬剤の血中濃度が上昇する恐れがある]
  • (注射)リファンピシン[他のアゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール,フルコナゾール)の血中濃度の低下及び血中濃度半減期の減少が報告されている]

臨床検査値への影響

  • (注射)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60によると思われるトリグリセリド,総コレステロール値の上昇がみられることがある

13. 標準菌に対するMICと臨床分離菌に対するMIC80,MIC60(μg/ml)

備考欄の「※」にマウスポインタを合わせると注釈事項を表示します。

このデータは、主として発売時のデータに、今回の更新にあたり一部改訂・追加したものであり、現時点に適合しないものも含まれています。 最新データについては、各種サーベイランスデータをご参考ください。

菌名 感受性 標準菌株 標準菌のMIC 臨床分離菌 備考
MIC80
*MIC90
MIC60
**MIC50
Blastomyces spp. ≦0.04
Candida glabrata ≦0.04~0.63
Cryptococcus neoformans ≦0.04~1.25
Fonsecaea spp. 0.08~0.31
Histoplasma capsulatum ≦0.04
Trichophyton spp. ≦0.04~0.08
Candida albicans ≦0.04~5
Candida krusei 0.16~10 8 4
Candida tropicalis 2.5~10 4 4
Cladosporium spp. 0.08~1.25
Geotrichum spp. 0.63~1.25
Phialophora spp. ≦0.04~2.5
Sporothrix spp. 0.63~2.5
Aspergillus fumigatus 1.25~5
Mucor spp. 5~10