製剤の調査資料

[出典]
山口恵三、石井良和、岩田守弘、他:Meropenemを含む各種注射用抗菌薬に対する2004年臨床分離株の感受性サーベイランス。

最終データ更新日:2010-07-31

Moxifloxacin [MFLX]

モキシフロキサシン, ニューキノロン系

1. 商品名

先発品

  • アベロックス錠400mg 【バイエル薬品】

2. 日本における発売年

2005(平成17)年

3. 特長

  • 呼吸器感染症において1日1回投与で高い臨床効果を示すレスピラトリーキノロンである。
  • 呼吸器感染症の主要原因菌に対して強い抗菌力を有している(in vitro)。
  • 高い血中濃度と長い半減期により1日1回投与で大きなAUCが得られ,呼吸器組織への移行にもすぐれる。
  • キノロン系薬として日本で初めてPK/PDの概念に基づき開発され,臨床効果と相関するパラメータであるAUC/MICは呼吸器感染症の主要原因菌で高い値を示す(in vitro)。
  • 自然耐性による耐性化,継代培養による耐性化を来しにくいことが認められている(in vitro)。
  • 承認時までの国内臨床試験では,505例中130例(25.7%)に副作用(臨床検査値の異常変動を含む)が認められ,主な副作用は,下痢24例(4.8%),肝機能検査異常22例(4.4%),悪心18例(3.6%),消化不良14例(2.8%),腹痛12例(2.4%)等であった。 また,国外臨床試験では,9225例中2314例(25.1%)に副作用が認められた。主な副作用は,悪心653例(7.1%),下痢461例(5.0%),浮動性めまい233例(2.5%)等であった。
  • 重大な副作用:ショック,アナフィラキシー様症状(血管浮腫等),心室性頻拍(Torsades de pointesを含む),QT延長,偽膜性大腸炎,腱炎・腱断裂等の腱障害,痙攣,錯乱・幻覚等の精神症状,失神,意識消失,皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群),肝炎(主に胆汁うっ滞性),黄疸,肝機能障害があらわれることがある。
  • 重大な副作用(類薬):他のニューキノロン系抗菌剤で横紋筋融解症,間質性肺炎,低血糖,中毒性表皮壊死症(Lyell症候群),急性腎不全,過敏性血管炎が報告されている。

4. 承認済有効菌種

  • モキシフロキサシンに感性のブドウ球菌属
  • レンサ球菌属
  • 肺炎球菌
  • モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス
  • 大腸菌
  • クレブシエラ属
  • エンテロバクター属
  • プロテウス属
  • インフルエンザ菌
  • レジオネラ・ニューモフィラ
  • アクネ菌
  • 肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)
  • 肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)

5. 承認はとれていないが、臨床的に有効と思われる菌種

  • 腸球菌属
  • ペプトストレプトコッカス属
  • マイコバクテリウム属(結核菌)
  • 炭疽菌
  • クロストリジウム属
  • 淋菌
  • 髄膜炎菌
  • 赤痢菌
  • サルモネラ属
  • シトロバクター属
  • セラチア属
  • モルガネラ・モルガニー
  • プロビデンシア属
  • 緑膿菌
  • ステノトロホモナス・マルトフィリア
  • アシネトバクター属
  • カンピロバクター属
  • バクテロイデス属

6. 用法・用量

  • 表在性皮膚感染症,深在性皮膚感染症
  • 外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
  • 咽頭・喉頭炎,扁桃炎,急性気管支炎,肺炎,慢性呼吸器病変の二次感染
  • 副鼻腔炎

<効能・効果に関連する使用上の注意>

  • 皮膚科領域感染症に対して本剤を投与する場合には,一次選択薬としての使用は避けること。
  • 通常,成人にはモキシフロキサシンとして,1回400 mgを1日1回経口投与する

<用法・用量に関連する使用上の注意>

  • 本剤の使用にあたっては,耐性菌の発現等を防ぐため,原則として感受性を確認し,疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。更に,本剤の投与期間は,原則として皮膚科領域感染症,咽頭・喉頭炎,扁桃炎,急性気管支炎及び慢性呼吸器病変の二次感染に対しては7日間以内,肺炎及び副鼻腔炎に対しては10日間以内とすること。
  • 体重が40kg未満の患者では,低用量(200 mg)を用いるなど慎重に投与すること。特に高齢者においては加齢に伴う生理機能の低下等も考えられることから注意すること。

7. 作用機序

  • 本剤はグラム陰性菌ではDNAジャイレース,グラム陽性菌ではトポイソメレースⅣに対して阻害活性を示し,殺菌的に作用する。

8. 血中半減期

経口 T1/2 13.9h

9. 排泄経路

  • 腎………35.4%
  • 肝臓………60.9%

10. 臓器移行性

  • ◎:≧25μg/ml
  • ○:25>~≧3
  • △:3>~≧1
  • x:1>
  • -:データなし
  • (*1) ◎56.7(肺胞マクロファージ),○5.36(気管支粘膜),○20.7(気道分泌液)
  • (*2) ○7.48(上顎洞),○8.19(篩骨洞),○9.09(鼻ポリープ)
  • (*3) △1.6(水疱液)
腎・尿路
肝・胆汁
喀痰・気管支分泌液 ◎~○ (*1)
骨髄
骨盤腔
臍帯血
腹腔
母乳
扁桃腺
羊水
髄液
腸管
副鼻腔 ○ (*2)
筋・皮下組織 △ (*3)
胸腔
歯槽

11. 副作用

  • ◎:5%以上
  • ○:0.1%以上5%未満
  • △:0.1%未満
  • ×:これまでに報告はない
  • ?:頻度不明
  • !:同系薬剤で報告がある
  • !!:大量投与時に起こる
ショック
過敏症
腎障害
肝障害
消化器障害
血液・造血器障害
溶血性貧血
精神・神経系障害
聴覚障害
Vit.B・K 欠乏症 ×
偽膜性大腸炎
電解質異常 ×
Antabuse作用

12. 使用上の注意

禁忌

  • 本剤の成分又は他のキノロン系抗菌剤に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 重度の肝障害のある患者[重度の肝障害患者に対する安全性は確立していない。]
  • QT延長のある患者(先天性QT延長症候群等)[心室性頻拍(Torsades de pointesを含む),QT延長の増悪を起こすことがある。]
  • 低カリウム血症のある患者 [心室性頻拍(Torsades de pointesを含む),QT延長を起こすことがある。]
  • クラスⅠA(キニジン,プロカインアミド等)又はクラスⅢ(アミオダロン,ソタロール等)の抗不整脈薬を投与中の患者
  • 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
  • 小児等

原則禁忌

慎重投与

  • てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者[ 痙攣を起こすことがある。]
  • 高齢者
  • 重度の徐脈等の不整脈,急性心筋虚血等の不整脈を起こしやすい患者[心室性頻拍(Torsades de pointesを含む),QT延長を起こすことがある。

相互作用 併用注意

(1) 併用禁忌とその理由(併用しないこと)

  • クラスIA抗不整脈薬:キニジン,プロカインアミド等 クラスⅢ抗不整脈薬:アミオダロン,ソタロール等
    クラスⅠA(キニジン,プロカインアミド等)及びクラスⅢ(アミオダロン,ソタロール等)の抗不整脈薬は,QT延長作用を有することが知られている。これらの薬剤を投与中の患者に本剤を併用することによりQT延長作用が相加的に増強されるおそれがあり,心室性頻拍(Torsades de pointesを含む),QT延長を起こすことがあるため,これらの薬剤と本剤との併用を禁忌とした。

(2) 併用注意とその理由(併用に注意すること)

  • チアジド系利尿剤、ループ系利尿剤、糖質副腎皮質ホルモン剤、ACTH、グリチルリチン製剤
    チアジド系利尿剤,ループ系利尿剤,糖質副腎皮質ホルモン剤,ACTH,グリチルリチン製剤は,カリウム排泄作用を有しており,低カリウム血症を発現することがある。低カリウム血症のある患者では,心筋興奮後の再分極が遅延する可能性があり,QT延長が発現しやすくなることが知られているので,これらの薬剤と本剤を併用する際は,十分に注意すること。
  • シサプリド(国内販売中止,承認整理済)、エリスロマイシン、抗精神病薬、三環系抗うつ薬
    シサプリド,エリスロマイシン,抗精神病薬(フェノチアジン系,ブチロフェノン系等),三環系抗うつ薬は,QT延長作用を有することが知られている。これらの薬剤を投与中の患者では,本剤の服用により相加的なQT延長が発現するおそれがあることから,これらの薬剤と本剤を併用する際は,十分に注意すること。なお,現在,シサプリドは国内では販売されていない。
  • アルミニウム又はマグネシウム含有の制酸剤等、鉄剤
    本剤をアルミニウム又はマグネシウム含有の制酸剤や鉄剤と同時に投与した際に,本剤の血漿中濃度の減少が認められた。これは,多価の金属イオンと本剤が難溶性のキレートを形成し,本剤の消化管からの吸収が低下するためと考えられる。したがって,本剤とアルミニウム又はマグネシウム含有の制酸剤等や鉄剤を併用する際は,本剤の効果が減弱するおそれがあるので,本剤との同時投与を避け,本剤投与後2時間以上間隔をあけてこれらの製剤を服用するなど注意すること。
  • ワルファリン
    他のキノロン系抗菌剤で,ワルファリンとの併用時にワルファリンの作用を増強し,プロトロンビン時間の延長が認められたとの報告がある。作用機序としては,① ワルファリンの肝代謝を抑制するためワルファリンの血漿中濃度が上昇する,② 血漿蛋白に結合しているワルファリンと置換し,遊離ワルファリンが増加するなどが考えられる。 なお,国外臨床試験において本剤とワルファリンとの相互作用を検討したが,本剤との併用投与によるワルファリンの薬物動態(Cmax,AUC,T1/2)への影響は認められなかった。また,プロトロンビン及び各種凝固因子についても,併用投与による有意な影響は認められなかった。
  • フェニル酢酸系又はプロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤、フェンブフェン等
    キノロン系抗菌剤は,抑制性神経伝達物質であるGABA(γ‐アミノ酪酸)のGABAA受容体結合を阻害することによる中枢興奮作用を有しており,そのGABAA受容体結合阻害は,非ステロイド性消炎鎮痛剤により増強されると考えられている。また,他のキノロン系抗菌剤で,非ステロイド性消炎鎮痛剤との併用により,痙攣を起こすことがあるとの報告がある。 なお,マウス(各群10匹)において,イブプロフェン(120 mg/kg),フェンブフェン(120 mg/kg),ジクロフェナク(75 mg/kg)の経口投与1時間後に本剤(300 mg/kg) を投与した結果,併用投与による痙攣誘発作用は認められなかった。

臨床検査値への影響

13. 標準菌に対するMICと臨床分離菌に対するMIC80,MIC60(μg/ml)

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このデータは、主として発売時のデータであり、必ずしも現時点に適合するものではありません。 最新データについては、各種サーベイランスデータをご参考ください。

菌名 感受性 標準菌株 標準菌のMIC 臨床分離菌 備考
MIC80
*MIC90
MIC60
**MIC50
Chlamydophila pneumoniae 0.063 0.06
Enterobacter spp. 0.2 0.05
Escherichia coli 0.025 0.1
Haemophilus influenzae ≦0.025
Klebsiella spp. 0.025 0.05
Legionella pneumophila 0.025
Moraxella [B] catarrhalis 0.05
Mycoplasma pneumoniae ≦0.06
Propionibacterium acnes 0.25
Proteus spp. 0.1
Staphylococcus aureus 0.05 0.1
Staphylococcus epidermidis 0.78
Streptococcus pneumoniae (PRSP) 0.1
Streptococcus pneumoniae (PSSP) 0.05 0.1
Streptococcus pyogenes 0.1 0.1