製剤の調査資料

[出典]
山口恵三、石井良和、岩田守弘、他:Meropenemを含む各種注射用抗菌薬に対する2004年臨床分離株の感受性サーベイランス。

最終データ更新日:2010-07-31

Zidovudine [ZDV:AZT]

ジドブジン, 抗ウイルス剤

1. 商品名

先発品

  • レトロビルカプセル 【グラクソ・スミスクライン, ヴィーブヘルスケア】

2. 日本における発売年

1987(昭和62)年

3. 特長

  • エイズ及びエイズ関連症候群患者において,骨髄抑制等の副作用を有するが,臨床的に有用性が認められた本邦初の治療剤である.

4. 承認済有効菌種

  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

5. 承認はとれていないが、臨床的に有効と思われる菌種

  • HTLV-1(ATL)

6. 用法・用量

  • HIV感染症
  • 1日500~600mg,1日2~6回に分けて投与(増減)

7. 作用機序

  • ウイルス感染細胞内で宿主細胞チミジンキナーゼによりリン酸化され,AZT三リン酸(AZTTP)となり,デオキシチミジン三リン酸と拮抗してウイルス逆転写酵素を阻害し,ウイルスDNA鎖伸長を停止させる. AZTTPのウイルス逆転写酵素に対する親和性は細胞性DNAポリメラーゼαより約100倍強いので正常細胞に対する影響は抗ウイルス活性に比べて少ない.

8. 血中半減期は中程度

経口 β1/2 60分
(t max:投与後30分)

9. 排泄経路

  • 腎………約90% (未変化体14.3%,代謝体75.2%)

10. 臓器移行性

  • ◎:極めて良好
  • ○:良好
  • △:あまり良くない
  • x:ほとんど移行なし
  • ?:不明
腎・尿路
肝・胆汁
喀痰・気管支分泌液
骨髄
骨盤腔
臍帯血
腹腔
母乳
扁桃腺
羊水
髄液
腸管
副鼻腔
筋・皮下組織
胸腔
歯槽

11. 副作用

  • ◎:5%以上
  • ○:0.1%以上5%未満
  • △:0.1%未満
  • ×:これまでに報告はない
  • ?:頻度不明
  • !:同系薬剤で報告がある
  • !!:大量投与時に起こる
  • ※:筋骨格系及び呼吸器系障害,全身症状,その他(?)
ショック ×
過敏症
腎障害
肝障害
消化器障害
血液・造血器障害
溶血性貧血 ×
精神・神経系障害
聴覚障害
Vit.B・K 欠乏症 ×
偽膜性大腸炎 ×
電解質異常 ×
Antabuse作用
その他※

12. 使用上の注意

禁忌

  • 好中球数750/mm3未満又はヘモグロビン値が7.5 g/dL未満に減少した患者(ただし原疾患であるHIV感染症に起因し、本剤又は他の抗HIV薬による治療経験が無いものを除く)[好中球数,ヘモグロビン値が更に減少することがある]
  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • イブプロフェン投与中の患者[出血傾向が増強したとの報告がある]

原則禁忌

慎重投与

  • 好中球数1,000/mm3未満又はヘモグロビン値が9.5 g/dL未満の患者[好中球数,ヘモグロビン値が更に減少することがある]
  • 腎又は肝機能障害のある患者[高い血中濃度が持続するおそれがある]
  • ビタミンB12欠乏患者[貧血が発現するおそれがある]
  • 高齢者

相互作用 併用禁忌

  • イブプロフェン(ブルフェン等)[血友病患者において出血傾向が増強することがある]

相互作用 併用注意

  • ペンタミジン,ピリメタミン,スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤,フルシトシン,ガンシクロビル,インターフェロン,ビンクリスチン,ビンブラスチン,ドキソルビシン[本剤の毒性作用が増強されることがある]
  • プロベネシド[本剤の全身クリアランスが約1/3に減少し半減期が約1.5倍延長したとの報告があるので,投与間隔を適宜あける]
  • フェニトイン[血中フェニトイン濃度が約1/2に減少するとの報告がある。また、上昇するとも報告されているので,血中フェニトイン濃度を注意深く観察する]
  • フルコナゾール、ホスフルコナゾール[本剤の最高血中濃度が84%上昇するとの報告がある]
  • リトナビル[本剤の最高血中濃度が27%減少し、AUCが25%減少するとの報告がある]
  • リファンピシン[本剤の全身クリアランスが約2.5倍増加し、AUCが約1/2減少するとの報告がある]
  • サニルブジン[細胞内におけるサニルブジン三リン酸化体が減少し、サニルブジンの効果が減少するとの報告があるので、本剤とサニルブジンの併用療法は避けることが望ましい]
  • リバビリン[in vitroにおいてリバビリンとの併用により本剤の効果が減弱するとの報告があるので、本剤とリバビリンの併用療法は避けることが望ましい]

臨床検査値への影響

13. 抗ウイルス作用

ウイルス種方法IC50*
マウス  
Rauscherマウス白血病ウイルス(in vivo)6.6nM
Moloneyマウス白血病ウイルス(in vivo)12.2nM
ネズミレトロウイルス  
Friend白血病ウイルスプラーク減少法0.001μg/ml
Harvey肉腫ウイルスプラーク減少法0.002μg/ml
SLS3-3(向T細胞性)XCプラーク法0.013μg/ml
ネコ白血病ウイルスフォーカス誘導法,
免疫蛍光フォーカス誘導法,
またはyield reduction法
 
Richard株0.20μg/ml
MSK株0.27μg/ml
ウマ伝染性貧血ウイルス細胞変性効果0.27μg/ml
サル向T細胞性ウイルス3型  
Macaque株 14μg/ml(不完全阻害)
Mangabey株 <0.3μg/ml
ヒト向T細胞性ウイルス1型サザンブロット法<2.4μg/ml
ヒト免疫不全ウイルスT4リンパ球系細胞を用いた系<0.13μg/ml
ヒトリンパ球系H9細胞増殖(in vitro)267μg/ml
EBウイルス(in vitro)2.9μg/ml

*IC50:50% inhibitory concentration               1μg/ml=3.74μM