製剤の調査資料

[出典]
山口恵三、石井良和、岩田守弘、他:Meropenemを含む各種注射用抗菌薬に対する2004年臨床分離株の感受性サーベイランス。

最終データ更新日:2011-03-31

Micafungin [MCFG]

ミカファンギンナトリウム, キャンディン系

1. 商品名

先発品

  • ファンガード点滴用25mg/ファンガード点滴用50mg/ファンガード点滴用75mg 【アステラス製薬】

2. 日本における発売年

2002(平成14)年

3. 特長

  • 新しい作用機序[細胞壁合成阻害作用(in vitro)]を有するキャンディン系抗真菌薬
  • カンジダ属に対して幅広い抗真菌スペクトルを有し、殺菌的に作用する(in vitro)
  • アスペルギルス属に対して幅広い抗真菌スペクトルを有し、発芽抑制及び菌糸先端部を破裂させることにより菌糸の伸長を抑制する(in vitro)
  • カンジダ属及びアスペルギルス属による真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症に対して優れた臨床効果を示す
  • 造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防に優れた効果を示す

4. 承認済有効菌種

  • アスペルギルス属及びカンジダ属による下記感染症
  • 真菌血症
  • 呼吸器真菌症
  • 消化管真菌症
  • 造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防

5. 承認はとれていないが、臨床的に有効と思われる菌種

6. 用法・用量

成人

  • アスペルギルス症 通常、成人にはミカファンギンナトリウムとして50~150mg(力価)を1日1回点滴静注する。重症又は難治性アスペルギルス症には症状に応じて増量できるが、1日300mg(力価)を上限とする。
  • カンジダ症 通常、成人にはミカファンギンナトリウムとして50mg(力価)を1日1回点滴静注する。重症又は難治性カンジダ症には症状に応じて増量できるが、1日300mg(力価)を上限とする。
  • 造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防 成人にはミカファンギンナトリウムとして50mg(力価)を1日1回点滴静注する。
  • 点滴静注に際しては、生理食塩液、ブドウ糖注射液又は補液に溶解し、75mg(力価)以下では30分以上、75mg(力価)を超えて投与する場合は1時間以上かけて行う。溶解にあたっては、注射用水を使用しないこと。[溶液が等張とならないため。]

小児

  • アスペルギルス症 通常、小児にはミカファンギンナトリウムとして1~3mg(力価)/kgを1日1回点滴静注する。重症又は難治性アスペルギルス症には症状に応じて増量できるが、1日6mg(力価)/kgを上限とする。
  • カンジダ症 通常、小児にはミカファンギンナトリウムとして1mg(力価)/kgを1日1回点滴静注する。重症又は難治性カンジダ症には症状に応じて増量できるが、1日6mg(力価)/kgを上限とする。
  • 造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防 小児にはミカファンギンナトリウムとして1mg(力価)/kgを1日1回点滴静注する。
  • 点滴静注に際しては、生理食塩液、ブドウ糖注射液又は補液に溶解し、1時間以上かけて行う。溶解にあたっては、注射用水を使用しないこと。[溶液が等張とならないため。]

7. 作用機序

  • 真菌細胞壁の主要構成成分である1, 3-β-D-glucanの生合成を非競合的に阻害する。カンジダ属に対する作用は殺菌的であり、アスペルギルス属に対しては発芽抑制及び菌糸先端部を破裂させることにより菌糸の伸長抑制作用を示す(in vitro)。

8. 血中半減期は長い

健康成人への静脈内持続投与[単回投与](25、50、75mgを30分あるいは150mgを1時間) t1/2 13.9時間

9. 排泄経路

  • 腎………未変化体 0.7% (尿中0~168時間)
  • 肝臓………未変化体 11.71% (糞中0~168時間)
  
  • ※外国人健康成人男子に14C標識ミカファンギンナトリウム28.3mgを1時間かけて単回静脈内持続投与したときのデータ
  •   
  

10. 臓器移行性

  • ◎:≧25μg/ml
  • ○:25>~≧3
  • △:3>~≧1
  • x:1>
  • -:データなし
  • ※:ラット
腎臓 ○ ※
肝臓 △ ※
喀痰・気管支分泌液
骨髄
骨盤腔
臍帯血
腹腔
母乳 × ※
扁桃腺
羊水
髄液
△ ※
空腸 △ ※
結腸 △ ※
副鼻腔
筋肉 × ※
○ ※
眼球 × ※
歯槽
血漿 ○ ※
脾臓 △ ※
大脳 × ※

11. 副作用

  • ◎:5%以上
  • ○:0.1%以上5%未満
  • △:0.1%未満
  • ×:これまでに報告はない
  • ?:頻度不明
  • !:同系薬剤で報告がある
  • !!:大量投与時に起こる
ショック
過敏症
腎障害
肝障害
消化器障害
血液・造血器障害
溶血性貧血
精神・神経系障害
聴覚障害
Vit.B・K 欠乏症
偽膜性大腸炎
電解質異常
Antabuse作用

12. 使用上の注意

禁忌

  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

原則禁忌

慎重投与

  • 1.薬物過敏症の既往歴のある患者
  • 2.肝障害のある患者[肝障害を悪化させることがある。]

相互作用 併用注意

  • 設定されていない

臨床検査値への影響

  • 該当しない

13. 標準菌に対するMICと臨床分離菌に対するMIC80,MIC60(μg/ml)

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このデータは、主として発売時のデータであり、必ずしも現時点に適合するものではありません。 最新データについては、各種サーベイランスデータをご参考ください。

菌名 感受性 標準菌株 標準菌のMIC 臨床分離菌 備考
MIC80
*MIC90
MIC60
**MIC50
Aspergillus flavus ATCC9643 0.0156
    * 0.0313 ** 0.0156
Aspergillus fumigatus TIMM0063 0.0078
    * 0.0313 ** 0.0156
Aspergillus nidulans IFM5369 0.0078
Aspergillus niger ATCC6275 0.0078
    * 0.0313 ** 0.0156
Aspergillus terreus IFM40852 0.0156
    * 0.0156 ** 0.0078
Aspergillus versicolor IFM41406 0.0156
Candida albicans ATCC90028 0.0156
    FP633 0.0313
    * 0.0313 ** 0.0156
Candida albicans (FLCZ-resistant) * 0.0313 ** 0.0156
Candida glabrata ATCC90030 0.0156
    * 0.0313 ** 0.0156
Candida guilliermondii 13003 0.25
Candida kefyr ATCC28838 0.125
Candida krusei ATCC6258 0.125
    * 0.125 ** 0.125
Candida tropicalis TIMM0313 0.0313
    * 0.0625 ** 0.0313
Exophiala spinifera ATCC18218 0.25
Saccharomyces cerevisiae ATCC9763 0.125
Candida guilliermondii * 2 ** 1
Candida parapsilosis ATCC22019 2
    * 4 ** 1
Cladophialophora bantiana IFM4821 0.5
Exophiala dermatitidis IFM4827 2
Fonsecaea pedrosoi ATCC44356 2
Absidia corymbifera × IFM40776 >64
Cryptococcus neoformans × TIMM0354 >64
Cunninghamella elegans × IFM40505 >64
Fusarium solani × IFM41532 >64
Pseudallescheria boydii × IFM41585 >64
Rhizopus microsporus × IFM46417 >64
Rhizopus oryzae × IFM46105 >64
Trichosporon asahii × TIMM3144 >64
Trichosporon cutaneum × IFM40140 >64