製剤の調査資料

[出典]
山口恵三、石井良和、岩田守弘、他:Meropenemを含む各種注射用抗菌薬に対する2004年臨床分離株の感受性サーベイランス。

最終データ更新日:2011-03-31

Quinupristin / Dalfopristin [QPR/DPR]

キヌプリスチン/ダルホプリスチン, ストレプトグラミン系

1. 商品名

先発品

  • 注射用シナシッド  【アステラス製薬】

2. 日本における発売年

2003(平成15)年

3. 特長

  • 世界で初めてのストレプトグラミン系注射用抗生物質製剤である。
  • バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(VREF)に対し強い抗菌力(in vitro)を示す。
  • VREF感染症に対する有効率(治癒+改善/症例数)は74.0%(265例/358例)である(海外データ)。

4. 承認済有効菌種

  • キヌプリスチン・ダルホプリスチンに感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム

5. 承認はとれていないが、臨床的に有効と思われる菌種

6. 用法・用量

  • 通常,成人にはキヌプリスチン・ダルホプリスチンとして,1回7.5mg/kg,1日3回,60分かけて点滴静注する.本剤の溶解には5%ブドウ糖液又は注射用水を用い,希釈には5%ブドウ糖液を用いること.糖尿病患者に対しては10%マルトース液を用いてもよい.なお,生理食塩液やヘパリン含有液は用いないこと.

7. 作用機序

  • 本剤の有効成分であるキヌプリスチン及びダルホプリスチンは、いずれも細菌リボソームに作用し蛋白合成を阻害するが、リボソーム上の作用部位は異なる。ダルホプリスチンはキヌプリスチンの細菌リボソームへの結合親和性を高め、両成分が共存することにより相乗的なin vitro抗菌力を示す。本剤の作用機序はグリコペプチド系抗生物質とは異なっており、VREFに対して効果を示す。また、キヌプリスチン及びダルホプリスチンの主要代謝物も親化合物と同様の活性を示すことがin vitroで証明されている。

8. 血中半減期は中程度

1時間点滴 t1/2 1.11時間

9. 排泄経路

  • 腎………19.2%(活性体) (0~24時間尿中排泄率)
  • 肝臓………1.8%(活性体) (0~48時間糞便中排泄率)

10. 臓器移行性

  • ◎:≧25μg/ml
  • ○:25>~≧3
  • △:3>~≧1
  • x:1>
  • -:データなし
  • *:雄性カニクイザル、10mg/kgで12分間点滴静注
  • **:雌性ラット、6mg/kg単回静脈内投与
腎臓 ○ *
胆汁 ◎ *
喀痰・気管支分泌液
骨髄 ×
骨盤腔
臍帯血
腹腔
母乳 × **
扁桃腺
羊水
髄液
小腸 ○ *
副鼻腔
皮膚 × *
胸腔
歯槽
血液 × *

11. 副作用

  • ◎:5%以上
  • ○:0.1%以上5%未満
  • △:0.1%未満
  • ×:これまでに報告はない
  • ?:頻度不明
  • !:同系薬剤で報告がある
  • !!:大量投与時に起こる
ショック
過敏症
腎障害
肝臓
消化器
血液
貧血
精神・神経系障害
聴覚障害
Vit.B・K 欠乏症
偽膜性大腸炎
電解質異常
Antabuse作用

12. 使用上の注意

警告

  • 本剤の耐性菌の発現を防ぐため,〈用法・用量に関連する使用上の注意〉の項を熟読の上,適正使用に努めること.

禁忌

  • 1.本剤の成分又は他のストレプトグラミン系抗生物質(ミカマイシン等)に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 2.スパルフロキサシン,ピモジド,キニジン又はシサプリドを投与中の患者

原則禁忌

  • 重篤な肝障害のある患者[血漿中濃度が上昇し,肝障害が悪化するおそれがある.ただし,やむを得ず投与する場合は,頻回に肝機能検査を行うこと.必要に応じ投与回数を1日3回から2回に減ずる等適宜減量して投与すること.]

慎重投与

  • 1.肝障害のある患者[高ビリルビン血症やトランスアミナーゼ値の上昇等の肝機能の悪化を認めることがある.また,代謝能の低下により,血漿中濃度が持続するおそれがある.]
  • 2.腎障害のある患者[海外の慢性腎不全患者を対象とした臨床薬理試験でAUCが高くなったとの報告がある.]

相互作用 併用禁忌

  • 1.ピモジド(オーラップ) キニジン(硫酸キニジン) シサプリド(国内承認整理済) (これらの薬剤の血中濃度を上昇させ,QT延長,心室性不整脈,血液障害,痙攣等の副作用を起こすことがある. )
  • 2.スパルフロキサシン(スパラ)  (QT延長,心室性不整脈を起こすことがある. )

相互作用 併用注意

  • 1.シクロスポリン、タクロリムス(これらの薬剤の血中濃度を上昇させることがあるので,併用する場合には血中濃度モニタリング(TDM)を行い,必要に応じてこれらの薬剤の投与量を減量するなど用量に注意すること. )
  • 2.ジヒドロピリジン系Ca拮抗剤 ニフェジピン,ニルバジピン,ニソルジピン等、ネビラピン、インジナビル、サキナビル、リトナビル、ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍剤 ビンブラスチン等、ブロチゾラム、アルプラゾラム、ドセタキセル、パクリタキセル、麦角アルカロイド、ベラパミル、ジルチアゼム、ベンゾジアゼピン系薬剤 ジアゼパム,ミダゾラム,トリアゾラム等、クラリスロマイシン、カルバマゼピン、リドカイン、ジソピラミド、シルデナフィル、シンバスタチン、セレギリン、メチルプレドニゾロン(これらの薬剤の血中濃度を上昇させることがあるので,併用する場合には必要に応じてこれらの薬剤の投与量を減量するなど用量に注意すること. )
  • 3.ジゴキシン(これらの薬剤の血中濃度を上昇させることがあるので,併用する場合には必要に応じてこれらの薬剤の投与量を減量するなど用量に注意すること. )

臨床検査値への影響

  • 該当しない

13. 標準菌に対するMICと臨床分離菌に対するMIC80,MIC60(μg/ml)

備考欄の「※」にマウスポインタを合わせると注釈事項を表示します。

このデータは、主として発売時のデータであり、必ずしも現時点に適合するものではありません。 最新データについては、各種サーベイランスデータをご参考ください。

菌名 感受性 標準菌株 標準菌のMIC 臨床分離菌 備考
MIC80
*MIC90
MIC60
**MIC50
Clostridium perfringens IP 615 0.12
    IP 2794A 0.06
    ATCC 13124 0.12
    HMA 0.06
    HME 0.06
Clostridium sordellii IP 6018 0.03
Micrococcus luteus ATCC 9341 ≦0.063
Staphylococcus aureus FDA 209P JC-1 0.125
    Smith 0.25
    Terajima 0.25
    Neuman 0.25
Staphylococcus epidermidis ATCC 12228 0.25
Staphylococcus epidermidis (MRSE) * 0.25 ** 0.25
Streptococcus pyogenes ATCC 19615 0.25
Bacillus subtilis ATCC 6633 1
Bacteroides fragilis ATCC 25285 2
    MB 64086 2
    VPI 8708 1
    VPI 9032 1
    479 2
    530 2
    530R 2
Bacteroides thetaiotaomicron ATCC 29741 2
Enterococcus casseliflavus * 2 ** 2
Enterococcus faecium * 4 ** 1
Enterococcus faecium(VRE) * 0.5 ** 0.5
    * 0.78 ** 0.78
    * 2 ** 0.5
    * 0.5 ** 0.5
Enterococcus gallinarum * 2 ** 1
Prevotella Loescheii ATCC 15930 2
Staphylococcus aureus ATCC 29213 0.5
Staphylococcus aureus (MRSA) * 1 ** 1
Streptococcus pneumoniae IID 554 1
    * 1 ** 0.5
Vibrio cholerae WLL 1
Acinetobacter calcoaceticus NCTC 7844 16
Bacteroides fragilis HM2 8
Elizabethkingia meningoseptica TMS 466 4
Enterococcus avium * 8 ** 2
Enterococcus faecalis ATCC 29212 8
    ATCC 33186 16
    * 8 ** 8
Pseudomonas putida ATCC 17464 16
Alcaligenes faecalis × NCTC 655 >128
Alcaligenes xylosoxidans × >128
Burkholderia cepacia × ATCC 17759 32
Citrobacter freundii × ATCC 8090 64
    2 128
Enterobacter cloacae × ATCC 23355 >128
Escherichia coli × NIHJ JC-2 128
    ATCC 25922 32
Klebsiella pneumoniae × IFO 3512 128
Morganella morganii × IFO 3848 >128
Proteus mirabilis × ATCC 1287 >128
    ATCC 21100 32
Proteus vulgaris × IFO 3851 >128
Providencia rettgeri × IFO 13501 32
Providencia stuartii × IFO 12930 >128
Pseudomonas aeruginosa × IFO 3445 >128
    IFO 27853 >128
    A14 >128
    E7 >128
Salmonella paratyphi A × PB >128
Salmonella typhi × S60 32
Salmonella typhimurium × ATCC 13311 64
Serratia marcescens × IFO 12648 128
Shigella flexneri × 103 R4 32
Stenotrophomonas maltophilia × IID 1167 >128