製剤の調査資料

[出典]
山口恵三、石井良和、岩田守弘、他:Meropenemを含む各種注射用抗菌薬に対する2004年臨床分離株の感受性サーベイランス。

最終データ更新日:2010-07-31

Pyrazinamide [PZA]

ピラジナミド, 抗結核剤

1. 商品名

先発品

  • ピラマイド原末 【第一三共】

2. 日本における発売年

1956(昭和31)年

3. 特長

  • 細胞膜浸透性がよい。
  • 他剤が無効な酸性環境(pH:5.0~5.5)で抗菌作用を有する。
  • 代謝の障害された細胞内の結核菌に対して滅菌的に作用する。
  • 本剤を併用療法における治療薬に加えることで治療期間を12ヵ月から9ヵ月に短縮することができる。
  • 副作用については重篤なものとして肝障害が認められている。

4. 承認済有効菌種

  • 本剤に感性の結核菌

5. 承認はとれていないが、臨床的に有効と思われる菌種

6. 用法・用量

  • 通常、成人は、ピラジナミドとして、1日量1.5~2.0gを1~3回に分けて経口投与する。
  • 年齢、症状により適宜増減する。
  • なお、他の抗結核薬と併用すること。

7. 作用機序

現在のところ不明である。しかしピラジン酸、およびヒドロキシピラジン酸が薬効(抗菌活性)を担う本体と考えられており、例えば抗酸菌のピラジナミダーゼ (2-ピラジン酸を生じるデアミナーゼと5-ヒドロキシピラジン酸を産生するキサンチンオキシダーゼ)の活性と抗酸菌のピラジナミドに対する感受性が相関 するとの報告もある。また、マクロファージ内で産生されたピラジン酸がトラップされ、細胞内のpHを結核菌に毒性のあるレベルまでpHをさげるとも考えら れている。その他、作用機序に関してはいくつか報告がある。

8. 血中半減期は長い

経口(ピラジン酸) β1/2 12.3時間 <参考>(海外データ)インタビューフォームp11より
経口(ピラジナミド) 腎機能正常時 β1/2 約9.5時間 <参考>(海外データ)USPDI 2007 p2456より
経口(ピラジン酸) 腎機能正常時 β1/2 約12時間 <参考>(海外データ)USPDI 2007 p2456より

9. 排泄経路

  • 腎………<参考>70%(海外データ)(別の報告では54~59%)

10. 臓器移行性

  • ◎:≧10μg/ml
  • ○:10>~≧1
  • △:1>~≧0.5
  • x:0.5>
  • -:データなし
  • ※1:該当資料なし。
    <参考> (海外データ) 母乳栄養を行っていない29歳女性が本剤1g服用時、最高母乳中ピラジナミド濃度は1.5mg/L(投与3時間後)で、半減期9.0時間であった。最高血中濃度は42.0 mg/L(投与2時間後)。投与9時間後に代謝物ピラジン酸を0.8mg/L認めた(測定:HPLC法)。ほかにも報告がある。
  • ※2:該当資料なし。
    <参考> (海外データ) 結核性髄膜炎患者12名で3剤*(PZA、INH、RFP)治療中、本剤を1日1回朝絶食下31~33mg/kg(平均値)投与時、投与2、5-6、8時間後における髄液中(CSF)濃度は26.0、41.6、27.8μg/mLであった。3剤(*に同じ)、更に一部症例でステロイド併用治療中の28名の結核性髄膜炎患者を対象として、本剤34~41mg/kg投与後の髄液中濃度を測定した。投与2、5、8時間後のCSF濃度(平均値)はそれぞれ38.6、44.5、31.0μg/mLで2時間値は血清中濃度の約75%であり、5、8時間値は血清中濃度より約10%高い値であった。
腎・尿路
肝・胆汁
喀痰・気管支分泌液
骨髄
骨盤腔
臍帯血
腹腔
母乳 (※1)
扁桃腺
羊水
髄液 (※2)
腸管
副鼻腔
筋・皮下組織
胸腔
歯槽

11. 副作用

  • ◎:5%以上
  • ○:0.1%以上5%未満
  • △:0.1%未満
  • ×:これまでに報告はない
  • ?:頻度不明
  • !:同系薬剤で報告がある
  • !!:大量投与時に起こる
ショック ×
過敏症
腎障害
肝障害
消化器障害
血液・造血器障害
溶血性貧血 ×
精神・神経系障害
聴覚障害 ×
Vit.B・K 欠乏症 ×
偽膜性大腸炎 ×
電解質異常 ×
Antabuse作用 ×
その他※ ×

12. 使用上の注意

禁忌

  • 肝障害のある患者[副作用として肝障害の頻度が高く、症状が悪化するおそれがある。]

原則禁忌

慎重投与

  • 本人又は両親、兄弟に痛風発作(関節痛)の既往歴のある患者及び尿酸値の上昇している患者[副作用として尿酸値上昇、痛風発作があらわれることがある。]
  • 腎障害のある患者又は腎障害の疑いのある患者[腎排泄型の薬剤であり、腎障害の患者には用量調節が必要である。]
  • 高齢者

相互作用 併用注意

  • 肝障害を起こしやすい薬剤(副作用として肝障害の頻度が高く、併用により肝障害発現の危険性が増大する。)

臨床検査値への影響

  • 該当しない。
    <参考>(海外)尿中ケトン値(ニトロプルシッドナトリウムと反応し、妨害となるピンク~茶色を呈することがある)
    (堀岡正義、ほか 監訳:薬物投与情報1985 □Ⅰ医薬品情報 p.517-518, 1985, 同朋舎出版)。

13. 標準菌に対するMICと臨床分離菌に対するMIC80,MIC60(μg/ml)

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このデータは、主として発売時のデータであり、必ずしも現時点に適合するものではありません。 最新データについては、各種サーベイランスデータをご参考ください。

菌名 感受性 標準菌株 標準菌のMIC 臨床分離菌 備考
MIC80
*MIC90
MIC60
**MIC50
Mycobacterium tuberculosis (H37Rv株) 200